Pâte à chou ブラックフォーマル よみもの vol.2

井上保美がずっと大好きなものだけを詰め込んだ「Pâte à chou(パトアシュ)」より、
ブラックフォーマルコレクションをお披露目します。
第2回目は素材とかたちのおはなしです。
素材は吉田さん、かたちは佐々木さんに聞きました。

本物でなければいけない

  • 吉田友理子(よしだ・ゆりこ)
    2001年入社
    世界各地の生地屋とも関係が深い45R織物素材のリーダー

ブラックフォーマルをはじめるにあたって、お客様がフォーマルな場で着る服と思うと、絶対に本物でなければいけないという思いがあったので、イギリスの生地屋さんを何件も巡りました。歴史あるメーカーはいくつかあるのですが、その中でFox Brothers(※)に決めたのは、良い意味で“企業らしくない”、昔から同じものを流行に関係なくつくり続けている姿勢が、45Rと通じていると感じたからです。

今回の素材はFox Brothersが長年にわたってつくってきた生地見本の中から、45Rのブラックフォーマルにふさわしいものをオーダーしました。
裏には「Fox Brothers×45R」のダブルネームが付いています。

※Fox Brothers & Co Ltd(フォックスブラザーズ)は、1772年にイングランド南西部サマセット州ウェリントンで創業した老舗のテキスタイルメーカー。フランネル生地の生みの親として広く知られています。

やっぱりウールツイードはイギリス製

「本物を目指すとイギリスにはかないません。だから、イギリスのウールの歴史は本当にすごいと思います。」―やすみさん

「生地の目が開きすぎている」「肉感をもっとこうして」と、私たちはいつもかなり細かく工場さんにオーダーするのですが、Fox Brothersはそのすべてに応えて完璧な生地を仕上げてくれました。残念ながら日本国内では、同じようにつくることができません。
以前、日本でツイードをつくろうとしたときは、本物のシェットランドの糸を使ったにもかかわらず、どうしても仕上げが上手くいきませんでした。例えばウール縮絨やホームスパンの手機(てばた)ツイードなどは、イギリスよりもいいものを日本でつくることができるかもしれないですが、やはりウールツイードはイギリス製が本物です。
色に関しても、黒のような、チャコールグレーのような、スミクロのような絶妙な糸の混ざり方がとても素晴らしいです。この色もFox Brothersのオリジナルです。ヘリンボンの畝も潰れずに、しっかりと目が立っています。

コットンウールだからこその光沢感と
いい塩梅のハリ

ベネシャンはウール100%ではありません。タテ糸が綿のコットンウール素材です。これはイギリスの伝統競技クリケットのチームウェアに使われていた、レジメンストライプジャケットと同じ、昔ながらのつくり方ということでした。
日本でベネシャンをつくろうとすると、誰もがウール100%でつくろうとすると思います。でもコットンウールだからこそ、この光沢感といい塩梅のハリが出ます。ウール100%だとこうはいきません。
クリーニングは注意です!仕上げが難しいので、45Rのランドリーがおすすめです。きれいに仕上がりますし、保証も付きますのでぜひご利用ください。

素材の魅力を引き出すかたち

  • 佐々木麻衣(ささき・まい)
    2015年入社
    独創的なレディスアイテムを次々に生み出すモデリスト

服のかたちは、日々のやすみさんとの対話の中でつくられていきました。最初はジャケットとボトムスからはじまったのですが、この素材であればどういうシルエットで、どう仕立てたらよいのかと、素材の魅力を引き出すかたちを探っていきました。格好いい女性を思い描きながらジャケットのかたちを考え、それに合わせるきれいなシルエットのボトムを考えました。
そしてさらに、こういうインナーがあったら素敵だな、と思うアイテムを加えながらコレクション全体を組み立てました。
45Rの服は、コットンもウールもほとんどの製品を水洗いして仕上げるので、私にとっては洗わないで製品を仕上げるということがはじめてでした(笑)。洗わないと粗い部分が目立ってしまうので、カチカチに緊張しながらパターンを引いていたのを覚えています。

フォーマルでありながら45Rらしく

「ジャケットやボトムスは、歳を重ねてサイズが変わってもお直しできるように縫い代をたっぷりと残しました。お求めやすいお値段ではないので、手直ししながらヴィンテージになるまで着ていただきたいと思っています。」―やすみさん

仕様については、いつも以上に工場さんとよ〜く会話をしました。ブラックフォーマルなのにヘリンボン!ということに工場さんも驚いていましたね(笑)。素材が特徴的なので、アイロンをかけるのも難しかったようです。
ウールヘリンボンとベネシャン、2つの素材を同じかたちでつくっているのですが、それぞれの襟のステッチの間にふっくらと生地が収まるように、縫い代の幅やステッチ糸の太さを工場さんと何度も試して、格好良く決まる仕様をそれぞれの素材に合わせて選びました。

ピークドラペルジャケットはラペルが命なので、本格的なオーダースーツのように、ラペルにAMFステッチ(手縫いのように見える飾りステッチ)を入れているのですが、素材の力がすごいので普通のステッチだとほとんど埋もれてしまいます。そこで、ミシンで縫える中で最も太い糸を選び、本物のハンドステッチに見えるようにミシンの調子を繰り返し調整してもらって、ようやく今のステッチに行き着きました。

45Rの服は裏もかわいくないといけないので、ジャケットの裏にはマルチストライプ柄のインドカディの生地を縫い当てて、シャンパンゴールドのテープを貼って、女性らしいポイントを加えました。遊べるところは遊ばせてもらって、ブラックフォーマルでありながら、45Rらしい服というのを意識してつくりました。

服に付属するものについても、ボタンにはパトアシュのピンク色の刻印を入れて、スペアボタンを縫い付ける補修布はお花のかたちにくり抜いて、いつもとは違う工夫をこらしました。そして品質表示の文字は、なんとやすみさんの手書き文字をプリントしたものです。あっちを見てもこっちを見ても、楽しくなるようにつくりました。

こちらの製品は、下記店舗のイベントにて7月より販売予定です。

伊勢丹新宿
ジェイアール名古屋タカシマヤ
大阪島屋
京都
銀座
阪急うめだ
Badou-R本店
New York Uptown
香港 Star Street
北京 三里屯
Saint-honoré

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