September 8, 2026

 

店づくり

2027年の創業50周年に先駆け、これまでの歩みの集大成となる総本店を2026年9月8日にお披露目しました。
場所は、華やかな銀座の街並みの中にありながら、老舗の風情が残る「西銀座五番街通り」。
銀座の中心に立つ4階建てのビル1棟を舞台に、各階で異なる世界観を表現しました。
大工が木を組み、左官が壁を塗り、日本建築の素材と技術を詰め込んだ旗艦店です。

1階 栗の間

45Rの店づくりにおいて、「栗」は特別な存在です。銀座本店の1階は店づくりの集大成といえるほど栗の木を贅沢に詰め込みました。

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45Rの店づくりにおいて、「栗」は特別な存在です。
縄文時代から建材として人々の暮らしを支えてきた栗は、硬く丈夫で重厚感のある木材。
初代Badou-Rや京都店をはじめ、これまで数々の路面店の柱、壁、床として使われてきました。
銀座本店の1階は45Rの店づくりとしても、集大成といえるほど栗の木を贅沢に詰め込んだ空間です。

銀座本店の玄関として皆さまを迎える自動の引き戸、中央にそびえる2本の巨大な大黒柱と梁、そして回廊のように組み上げられた柱は、すべて古材の栗の木。どれも数百年前に建てられた古民家から受け継いだ、蔵の戸や柱を移築したものです。

柱に残る窪みは、かつて木と木を組み合わせるために刻まれた仕口(しくち)の跡です。当時の大工仕事の痕跡を消すことなく、素材がたどってきた歴史をそのまま生かしました。また古材だけでなく、名栗(なぐり)加工を施した平台と店内奥の壁にいたるまで、新旧さまざまな栗材を取り入れました。

栗と組み合わせる素材として選んだのが、水や湿気に強いチーク材です。
古くから船の部材としても重宝されてきたチークは、現在では世界的に厳しい輸出規制が設けられていますが、
銀座本店では規制以前から蓄えられていた希少な材を使用しています。

特に目を引くのが、全長約8mの巨木をしつらえたファサード。
まるで銀座本店の大鳥居のような圧倒的な存在感で、皆さまをお迎えします。

売場の足元にはヨットのデッキを思わせるチークの一枚板を敷き詰め、その両脇には歴代英国王室の居城、ウインザー城で実際に使われていた古い石畳を並べました。

ファサードにどどん、と重厚感を与えている巨岩は、福島県産の滝根石(たきねいし)の石壁です。自然のままのかたちを生かすために、隅がちょうどL字になっている岩を探して切り出し、銀座まで運び込みました。チークの迫力に負けない力強さで、銀座本店のビルを支えています。この巨岩を福島で切り出して施工したのは、滋賀の石工・穴太衆(あのうしゅう)。戦国時代の城郭の石積みの技を現代に受け継ぐ職人たちです。

時代を超え、海を渡り、職人の手によって命を吹き込まれた素材たちが、銀座本店に集結しています。

これほどまでに貴重な素材を集めることができた背景には、
施工を手がけた京都の数寄屋大工・三角屋が、長年かけて築いてきた建材の蓄積があります。
銀座本店に並ぶ木や石は、その膨大な建材の中から、素材の状態を知り尽くした三角屋の親方が、銀座本店のために選び抜いたものです。
滋賀の工場から木材を運び込む際には、夜中の西銀座五番街通りを通行止めにし、クレーンを使って各階の窓から搬入が行われました。
そしてファサードの滝根石は、まるで古代エジプトのピラミッド建造のように、
並べた鉄の丸棒の上を人力で転がしながら、やっとの思いで設置されました。

服が並ぶ売場の奥は、私たちが囲炉裏(いろり)と呼んでいる空間です。
古民家の蔵の戸を天板に仕立てた平台を囲炉裏に見立て、周りには試着室と腰掛けを据え付け、
皆さまにくつろいで過ごしていただける場所をつくりました。
かつて囲炉裏が暮らしの中心にあったように、私たちと皆さまが服を囲んで自然に交わる場になるように思いを込めました。

こうしてつくられた1階の栗の間は、Tシャツ・デニム・バンダナを中心に展開する場所です。
店づくりの原点でもある栗の木の空間で、私たちが大切にしてきたスタンダードをご覧いただけます。
時を重ねるほど色合いを深める栗の木。
45Rの服も数百年…とまではいきませんが、末永く育てていただければ幸いです。

2階 曲面の間

旬の服を展開する2階へ足を踏み入れると、曲面で描かれたやわらかな空間が広がります。

▼ 2階をくわしく見る

旬の服を展開する2階へ足を踏み入れると、曲面で描かれたやわらかな空間が広がります。
什器や壁、ラックに至るまで、丸みを帯びたかたちを取り入れました。
中央に据えたのは、太鼓型の天板を持つ台。
その周囲を包み込むように、栗の木で円形の「R壁(Roundの壁)」をしつらえ、
その壁面に沿うように湾曲した「R梯子」のラックを取り付けています。
さまざまな「R」が重なり合う空間に仕上げました。

試着室の床、その前にしつらえた壁、腰掛けには、1階と同じく名栗加工を施した栗の板を使用しています。日本でわずかに残る京都の名栗職人、原田銘木の原田さんによって斫(はつ)られた表面は、手や足になじむ心地よさと、豊かな木の杢目を引き出し、曲面の空間にさらなる凹凸を与えています。

売場と囲炉裏の間に立つ格子戸も、ゆるやかな曲面を描いて立てつけました。その柱には欅(けやき)の古材、格子には栗の新材を用いています。この格子戸は可動式になっていて、開いて景色を通すことも、閉じて空間を隔てることもできます。くるりと回転するたびに表情を変え、もうひとつ「R」を重ねました。

直線は人がつくったもの。直線の空間は効率がよくて合理的です。
自然界にある曲線は非効率かもしれませんが、不規則で有機的な美しさを持っています。
私たちが大切にしている服の風合いや着心地も、決して効率だけでつくれるものではありません。
だからこそ、曲面の空間は45Rの服と自然になじみ、服の表情にもさらなる奥行きを与えています。

ところで、以前の銀座本店をご存知の方なら、この空間にどこか懐かしさを感じていただけるかもしれません。
中央の平台は、旧銀座本店の1階にあったアフリカ原産の「ブビンガ」を素材にした台を持ち込み、
側面に栗の板を接ぎ合わせて新たに仕立て直したものです。
また、R壁は旧店舗のエントランスホールにあった円形壁の面影を受け継ぎ、現在の空間に合わせて再構築しました。
床板も旧店舗と同じように、褐色の松板を敷き詰めました。
この空間には、これまでの銀座本店で育まれてきた歴史を受け継ぎ、未来へ繋いでいくという思いも込められているのです。

3階 藍の間

日本の藍を世界へ伝えるため、檜や市松模様といった伝統的な木材や柄を取り入れました。

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3階は、日本の藍を世界へ発信する「藍の間」です。
日本を代表する木材の檜(ひのき)の柱や垂木(たるき)を組み上げ、
名栗仕上げを施した檜の平台を据え、藍色と白木の檜板を交互に敷き詰めて市松模様の床を描きました。
足を踏み入れると、檜のやわらかな白さと清々しい香りが空間に広がります。

こうした木の素材感を引き立て、空間に豊かな表情を与えているのが、左官の仕事です。
大工が空間の骨格をつくるとすれば、左官はその質感や表情をつくります。
丁寧に塗り込まれた床や壁は、京都で代々培われてきた技術を受け継ぐ、久住左官の職人たちが手がけました。

左官の見どころは、両側に広がる壁面です。太陽の光にきらめく海の水面を思わせる、パール感のある白と藍色のグラデーション。これは凹凸をつけて仕上げた白い漆喰の上から、藍色を吹き付けて表現しています。檜とこの壁が組み合わさり、凛とした清潔感に満ちた空間に仕上がりました。

また試着室の壁は、本来土間として用いるセメントのテクスチャーを壁に応用したものです。セメントをそのまま壁に塗るとひび割れが生じてしまうため、石膏でセメントのようなざらついた質感を再現しました。さらにアクセントとして、完全に乾く前の壁に砂利を投げつけて表面に散りばめ、乾燥後にその一部を落とすことで、砂利粒による凹凸感だけを残しています。壁の一面一面に、左官の知恵と技術が生かされています。

部屋の両隅では、小柄な二人の藍職人が藍染めの作業に勤しんでいます。
藍甕(あいがめ)の縁に立つ男の子「藍比古」は、藍の染料に浸した糸の枷(かせ)を棒に巻き付けて固く絞り、
女の子「藍比女」は、染め上がった糸を竹棒に掛けて干している様子。
藍比古の足元にある藍甕には、ぷくぷくと発酵して藍の華を咲かせた藍が甕いっぱいに満ちています。
この二人を制作したのは、奈良県の公式キャラクター・せんとくんの生みの親としても知られる彫刻家・薮内佐斗司さん。
Badou-Rにいる「バド坊」も、薮内さんによる作品です。

  • 藍比古(あいひこ)

  • 藍比女(あいひめ)

3階は、「藍職人いろいろ45」を取り揃える場所。
日本の藍を世界へ伝えるため、檜や市松模様といった伝統的な木材や柄を取り入れました。
心地よい緊張感と澄み渡る檜の香りに包まれた空間に、
津々浦々の土地に根ざした職人によって染め上げられる藍の服が並びます。
これまで藍職人の服をご覧になったことがある方も、
この空間を通してご覧いただくことで、きっと新たな魅力を見つけていただけると思います。

4階 茶馬亭

生活工芸を扱う、45Rはじめてのギャラリー。そして、銀座本店の茶室。茶の湯の美意識を取り入れ、外の世界から切り離された非日常の空間をつくりました。

▼ 4階をくわしく見る

4階はギャラリー茶馬亭(ちゃばてい)です。
かつて中国・雲南省の茶葉を馬でチベットへ運んでいた茶馬古道にちなんで名付けた茶馬亭は、
陶磁器、漆器、木工品などの生活工芸を扱うギャラリーです。
ここは銀座本店の茶室。茶の湯の美意識を取り入れ、外の世界から切り離された非日常の空間をつくりました。
隅々まで数寄屋の意匠を凝らし、どこに目を向けても趣を感じていただける空間になっています。

エレベーターを降りて茶馬亭の前に立つと、頭上に迫り出す屋根と土壁が外界と中の空間を隔てています。この屋根は檜皮葺(ひわだぶき)といわれ、飛鳥時代から続く日本固有の伝統技術。厚さ3mmほどに削いだ檜の皮を、専門の職人が数十枚も重ねて葺き上げる手法で、今や神社仏閣などの文化財でしかほとんど見ることができない技術です。

入口をくぐって中に入ると、六角形の敷瓦が敷き詰められた異次元が広がります。床に敷かれたこの敷瓦は中国の奥地で焼かれているもので、薪の炎で焼かれているため一枚一枚火の通り方が異なり、色合いにムラがあります。職人の技術によって整然とした配列で並んでいますが、よく見るとかたちや大きさも少しずつ不揃い。私たちの服と同じように、人の手でつくられた温かみを景色にしています。

部屋の奥には、色鮮やかな藍畑。この藍畑が描かれた絨毯は緞通(だんつう)といわれる日本の手刺織物です。45Rが描いた藍畑の絵をひと刺しひと刺し専門の職人が羊毛を打ち込んで織り上げました。都会のビルの中に居ながら、45Rの服を染める藍の故郷、てんとう虫や蜜蜂が集う藍畑の風景をご覧いただけます。

茶馬亭の土壁も、久住左官の職人たちによる仕事です。表千家の茶室を数十年にもわたってつくり続けてきた久住さん曰く、
「茶室の様式は日本の総合美術です。しかし、銀座の街のビルでそれを真似て、本格“風”な茶室をつくっても面白くもなんともありません。様式を超えた破格の茶室にしたいと思ったので、この壁は思い切り“パンク”に仕上げたつもりです。一般的な白い壁のギャラリーで作品を見るのと異なり、この空間で見る景色には『発見』があると思います。」とのことでした。
その壁は茶色い土壁の上に黒土、さらに白土を掛けてから部分的に削り落とすことで、見たことがないほど荒々しい土壁に仕上がっています。

中央に置かれた入れ子式の平台は、1階と同じように古民家の蔵の戸を平台として仕立て直したものです。段違いに組み合わされた2枚の松板は、かつて雨戸・内戸・網戸のように3枚組として重ねて使われていたうちの2枚。上板は防火性を高めるために板の上から土が塗られており、下板は素朴な松の木肌をそのまま残しています。そして平台にならなかったもう1枚は、通気性を確保するための格子戸だったそうです。この入れ子の平台は必要に応じて重ね合わせることもでき、引き出して広げることもできる可動式。昔の人の機能的な考えが、この平台には宿っているのです。

また茶馬亭では、立礼(りゅうれい)の様式でお茶を召し上がっていただけます。
点前台(てまえだい)の黄みがかった天板は、大きな「く」の字を描いて曲がった根曲がりのキハダの木。
山の斜面で力強く育った木の窪みには、炉壇(ろだん)に見立てたなつめ型の「つくばい」が見事に収まり、茶釜を乗せています。
このような一見扱いが難しい木も、その特性を隅々まで熟知する三角屋の親方の手によって、まるでこのためにあったかのように生かされています。
ここで一服召し上がっていただきながら、茶馬亭と作品たちをゆっくりとご覧いただけます。

私たちは土から生まれる素材が好きです。
土から草木が生え、綿や麻となり、服となり、やがて土に還っていく——その自然な循環を大切にしています。
銀座本店は、「畑からお店まで」という考えに基づいてつくりました。
衣・土・木の三位一体の空間の中で、大地と繋がるような感覚に触れていただけたら幸いです。

銀座本店を後にして西五番街通りからお店を見上げると、
窓越しに浮かぶ六角形の障子が、大きな行燈(あんどん)のように通りを彩っています。
夜にはぼんやりとした灯りが、歩みゆく皆さまの足元を照らしてくれます。