JR福島駅から曲がりくねった山道をバスで揺られること45分。45Rの自社工場、SDL(エスディーエル)は、里山と田んぼに囲まれたのどかな場所にあります。
実は、アパレルメーカーで自社工場を持っている会社は多くありません。一般的にメーカーは他社工場へ生産を委託することが多いなかで、45Rのニットはその多くをこの自社工場でつくっています。
そのなかでもカットソーのように着られる「ニットソー」はSDLの大得意アイテム。今回はそのものづくりをご紹介します。
SDLでは、糸から編み立て、洗い、裁断、刺繍、縫製、仕上げまでを一貫して行っています。
一般的に編みもの屋さん、洗い屋さん、縫製屋さん、刺繍屋さん、仕上げ屋さんと分業化されるものづくりの工程ですが、それらを1ヶ所で完結できるというのが、他にはないSDLの強み。長年現場に携わる45Rのスタッフの目が隅々まで行き届く環境で、ものづくりが進められています。
ニットソーのつくり方はその名のとおり、編み立てた(knit)の生地を裁断して縫製する(cut and sew)というもの。
一般的なニットは、身頃や袖のパーツをリンキングという手法でつないで仕立てますが、編地をTシャツと同じように裁断し、縫製して組み立てます。つまり、素材は上質なニットでありながら、Tシャツやスウェットのように気軽に着られるというのが、私たちの大好きなニットソーです。
ニットソーづくりは、糸づくりから。SDLでは紡績工場から届いた原糸をすべてコーンに巻き取り、編みやすい状態に整えます。届いたばかりの原糸は太さにムラがあったり、節があったり、粗削りな風合いの糸もあるので、そのままではスムーズに編めません。そこで糸切れしそうな部分を丁寧にチェックし、ワックスをかけながら巻き取り、編める状態へ糸を整えます。
整えられた糸は編みの現場へ移ります。ここでは、整然と並んだ約20台の編機が「ジャージャージャー!」と音を立てながら動き、編地を機械の中央からトロトロと編み落としています。ふっくらと空気を含ませながら編むので、生地が落ちていくのはとてもゆっくり。このシェットランドのニットを1着分編むのに約40分。編地によっては1時間以上かかることもあるといいます。効率よく途切れずに機械を動かすため、事前に糸を何本もつなぎ合わせてセッティングしてから編んでいます。複数の機械を同時に動かすので、ここでも入念な下準備が必要です。
編み上がった生地は検品台に広げて隅々までチェック。台の下に据え付けられたライトで照らしながら、ニットの目が落ちていないかな、糸が飛び出していないかな、と一枚一枚よ〜〜く確認してから洗いの工程へと進みます。洗い場ではまず生地をスチームで蒸かして編み目を整えてから、洗濯機と乾燥機で編み上がった生地を丸洗い、その後乾燥します。そして乾いたあとにももう一度スチーム。これによりキュッと編み目が締まり、ふっくらと仕上がるのです。風合いのお手本は、やすみさんの厳しいチェックを通った生地見本。このお手本と同じ風合いになるように目指して、洗い、乾燥の時間を細かく調整します。ニットはなにより風合いが命なのです。
次は裁断です。台の上には、ピシッと重ねてセットされた編地が並んでいます。型紙を置いて裁断機をセットすると、機械があっという間に10枚ほど重ねた編地を型紙の通りに裁断してくれます。ただし、シェットランドなどの厚みのある生地や、生地の取り位置を微調整する必要がある柄物は、熟練のスタッフによる手断ちで裁断します。その後、工場の別棟に場所を移して45Rの家紋、R刺繍を縫います。
縫製は、ニットソーのアイデンティティともいえる大切な工程です。ヴィンテージのスウェットと同じように、4本針のミシンでステッチワークを施すことで、ニットをニットソーの顔にするのです。ここは職人たちの腕の見せどころ。伸びやすいニットをまっすぐ、正確に縫うのは至難の業です。特に度目の甘いニットは縫うのが難しく、感覚をつかむまで時間がかかるということ。ネックは目がこぼれないようにロックミシンをかけてから縫うこともあり、とても手間がかかる工程です。
ちなみに、襟に付けるネームやスウェットパンツのウエスト紐などの付属品もSDL内でつくられています。
SDLの工場長も「いつからあるのか分からない」というほど古い小横(コヨコ)機という編機でカシャカシャと編まれた紐などのパーツを、スタッフがひとつずつ丁寧に取り付けています。
この後はいよいよ仕上げ。無駄糸を切り、アイロンをかけ、製品に不具合がないかチェックしたら、きれいに畳んで出荷されます。
出荷された製品は検品工場へ送られて第三者による最終チェックを受け、それで問題がなければ、ようやく45Rの物流倉庫「スタジオR」を経由して全国のお店へと届けられるのです。
45Rのスタッフの目が届く環境でものづくりが完結されるからこそ、製品の隅々までわたしたちの思いを通わせることができます。
Made in SDLのニットソーは、45Rのニットの柱。SDLでつくられた製品には、ちょっぴり誇らしげな気持ちで「SDL45R」のオリジナルネームを縫い付けています。