人の影、木漏れ日の影が好きです。真っ暗ではなく、光の輪郭や濃淡を映すグレーの影。
インディゴと向き合い続けてきて20数年経ち、34番目に完成したインディゴを影色納戸(かげいろなんど)と名付けることにしました。
藍のような、黒のような深い陰影のインディゴです。
きっかけは「グレーのデニムを創りたい」という一言でした。
それからわたしたちが最初に取り組んだのはグレーのロープ染色。インディゴの糸を染めるのと同じ要領でグレーにしたらどうだろう。しかし染料の配合や染色の時間、あーでもないこーでもないを繰り返しても納得のいく色合いには染まりません。
たとえグレーであったとしても、ヴィンテージデニムのような鮮やかな濃淡のコントラストを感じたい、そう考えていたわたしたちが行き着いたのはやっぱりインディゴでした。
ヒントはこれまで辿ってきた歴史にありました。
2003年に誕生した45Rのブラックインディゴ、墨納戸(すみなんど)です。墨とインディゴで染めた糸は、塗り重ねた墨の厚みを感じるような黒いインディゴ。長く経年を重ねていくことでインディゴが抜け、グレーに褪せていくというものでした。
墨納戸に着想を得て、ロープ染色の調整をさらに何度も何度も繰り返し…
ついに皆が納得できる糸が染め上がりました。
それはインディゴの深い青みとグレーの品の良い優しさを感じる不思議な色。
墨納戸よりも軽やかで柔らかく、何度か洗ってみると生き生きと鮮やかな
ブルーとグレーのグラデーションが浮かび上がりました。
もちろんインディゴの色合いは今までに見たことがないほど奥深く美しい色でしたが、
その糸でジーンズを仕立ててみると、思いがけずどんな色の服とも相性が良く、
合わせるものを選ばない実用性にも優れたデニムに仕上がりました。
これならどんなお客さまにもきっと喜ばれるでしょう。
お店で皆さまにお披露目する時が待ち遠しくてたまりません。
わたしたちの34番目のインディゴが完成したのです。