銀座本店 2階曲面の間

旬の服を展開する2階へ足を踏み入れると、曲面で描かれたやわらかな空間が広がります。
什器や壁、ラックに至るまで、丸みを帯びたかたちを取り入れました。
中央に据えたのは、太鼓型の天板を持つ台。
その周囲を包み込むように、栗の木で円形の「R壁(Roundの壁)」をしつらえ、
その壁面に沿うように湾曲した「R梯子」のラックを取り付けています。
さまざまな「R」が重なり合う空間に仕上げました。

試着室の床、その前にしつらえた壁、腰掛けには、1階と同じく名栗加工を施した栗の板を使用しています。日本でわずかに残る京都の名栗職人、原田銘木の原田さんによって斫(はつ)られた表面は、手や足になじむ心地よさと、豊かな木の杢目を引き出し、曲面の空間にさらなる凹凸を与えています。

売場と囲炉裏の間に立つ格子戸も、ゆるやかな曲面を描いて立てつけました。その柱には欅(けやき)の古材、格子には栗の新材を用いています。この格子戸は可動式になっていて、開いて景色を通すことも、閉じて空間を隔てることもできます。くるりと回転するたびに表情を変え、もうひとつ「R」を重ねました。

直線は人がつくったものです。直線の空間は効率がよくて合理的です。
自然界にある曲線は非効率かもしれませんが、不規則で有機的な美しさを持っています。
私たちが大切にしている服の風合いや着心地も、決して効率だけでつくれるものではありません。
だからこそ、曲面の空間は45Rの服と自然になじみ、服の表情にもさらなる奥行きを与えています。

ところで、以前の銀座本店をご存知の方なら、この空間にどこか懐かしさを感じていただけるかもしれません。
中央の平台は、旧銀座本店の1階にあったアフリカ原産の「ブビンガ」を素材にした台を持ち込み、
側面に栗の板を接ぎ合わせて新たに仕立て直したものです。
また、R壁は旧店舗のエントランスホールにあった円形壁の面影を受け継ぎ、現在の空間に合わせて再構築しました。
床板も旧店舗と同じように、褐色の松板を敷き詰めました。
この空間には、これまでの銀座本店で育まれてきた歴史を受け継ぎ、未来へ繋いでいくという思いも込められているのです。