Collection Winter 2023

二〇二三 ふ ゆ

あとがき

 藍染を、ただ染めるだけでなく、畑作り、すくも(藍の葉を発酵させて染料にしたもの)作りから自分たちで手がけてみようと始めた「藍職人いろいろ45」の服作りですが、スタートして約一年、当初の試行錯誤を思えば予想以上の反響、成果をあげることができました。なにより、45Rの考えに共感して仕事をともにしてくれている藍職人たちの表情が、ずいぶん明るくなった気がします。伝統工芸の殻に閉じこもることなく、産業としての藍染の未来を信じて集まってくれた職人たち──若い世代、女性も目立ちます──とともに、藍の新しい「産地」が作れたら、などと希望を抱くこともできています。
 藍の畑作りから始めると、おのずといまの日本の農業の仕組、構造を知ることになるのですが、そこで感じたのは、いつまでも補助金頼みでは続かない、未来は明るくならないのでは、ということでした。伝統工芸も同様かもしれません。
 一年前、藍染の関係者、業界の人たちと話を始めたときに驚いたのは、みなさん異口同音に「藍とはこうでなければいけない」と、定義というか、藍染を枠に閉じこめて語ることでした。正直、窮屈だなと思ったし、そうした既成の枠を取りはらってきたのが45Rの歴史です。今回も、自分たちが関わることで、藍染が自由に、風通しがよくなるといいなと思っていました。
 服も小物も、これまでは藍染というと「和」の印象が強すぎる気がして、現代の、普通の暮しとの距離を感じてきました。「藍職人いろいろ45」でも野良着など藍染のビンテージを手本に、それを45Rらしく仕立てた服も作りますが、またほかに藍染の「パトアシュ」(デザイナー井上保美の感性、個性にもとづくコレクション)なども作っています。日本と西洋、カジュアルとエレガントの融合は45Rの一貫したテーマなので、藍染においてもそれを実践することで、この大切な文化を広く、そして永く、伝えてゆきたいと願っています。
橋慎志