Collection Spring 2024

二〇二四 は る

あとがき

二〇二二年に四五周年を終えて、これからは「第二章」。45Rとして何をすべきか、ずっと考えています。そんなときは、自分の原点、会社の原点を見つめなおすようにしています。今回は「アイビー」です。
 振りかえると、自分で服を選ぶようになった学生時代、愛用したのがアイビーでした。三つボタンの紺のブレザー、オックスフォード生地のボタンダウンシャツ、コットンパンツ、レジメンタルタイ……アメリカのトラッドの質実さ、清潔感、品のよさに憧れたのだと思います。僕にとって服は人生そのものですから、アイビーは、僕という存在の原点といえるものです。
 アイビーには型があり、ルールがあります。洋服、着こなしの基本とされる所以です。現在のファッションを見渡すと、型がない、ルールもない。自由、といえばそうなのですが、僕には、根なし草に、不安定に見えてしまいます。そんな時代だからこそ、アイビーという、根っこのある服の確かさを、あらためて世に問いたいと考えました。
 45R流のアイビーとはなんでしょう。インディゴ染のレジメンタル、裏毛で作る紺ブレザー、ボタンのないボタンダウン……アイビーには型があるからこそ、それを踏まえて崩すこと、外すこと、遊ぶことができる。そうした「型」との自由な応答こそが、ファッションの醍醐味ではないでしょうか。
 型との応答、ということでは、日本には茶の湯という文化があります。「アイビー」とともに「茶」も、この春のコレクションのテーマです。
 二〇〇〇年にニューヨークに出店したとき、「日本のデニム」とは何かを考えぬきました。ひとつの答えは藍染でしたが、畳の部屋で正座する、素足のデニム姿を撮影し、イメージとして展開しました。大事な原点のひとつです。先年亡くなられた坂田和實さん(古道具坂田)が、李朝の古い平瓦を床にずらりと並べて展示したことがあります。驚いたし、見事でした。あのように、畳の床に、畳んだデニムを並べてみようと思っています。それもまた、「型との応答」のひとつです。
橋慎志