Collection Spring 2023

二〇二三 は る

あとがき

2023年春のカタログで語るべきことは、スーピマオーガニックコットンの使用でしょうか。これまでも「超ガーゼ」と呼ぶシリーズなどで使ってきましたが、45Rの原料の主役はずっとジンバブエコットンでした。そこに新しくスーピマを加えて、服の幅を広げよう、と考えたのです。
幅を広げるといっても、これまで語ってきた通り、45Rの基本方針は服の型をいたずらに増やさないことですから、「大切なもの」と呼ぶスタンダードの、型は変えずに原料を変えて、シリーズをより充実させようという試みでした。
ジンバブエの服作りの傾向は、ドライでハード、ゆえに経年変化も楽しめる、というものでしたが、スーピマは数あるコットンのなかでも最上とされる品質で、繊維が長く、光沢もあり、しなやかで上品な仕上りになります。ただし、私たちはカジュアルブランドなので、「三本柱」のうちのTシャツにもバンダナにもスーピマを用いています。
〈和漢のさかいをまぎらかす〉とは珠光が語った侘び茶の極意ですが、45Rの服のテーマも〈さかいをまぎらかす〉こと。スーピマという原料により、カジュアルとエレガントの両様をあわせもつ服が作りやすくなりました。
三本柱のもうひとつは、いうまでもなくデニムですが、それもこの春に新たな試みをしています。「影色納戸」という新色です。墨と藍のあいだのような─ ─まさに〈さかいをまぎらかす〉──色を目指して試作を繰返し、ようやく納得できるものができました。グレー(影色)のなかに藍を感じる、そして穿きこんでいっても芯にグレーが残るような、とても微妙な色あいです。スーピマにせよ影色納戸にせよ、〈さかい〉にこそ宿る美や文化を、感じていただけたら嬉しいです。
橋慎志