Collection Autumn Winter 2025

二〇二五 あきふゆ

あとがき

このところ京都へ行く用が多く、あらためてあの街の奥深さを実感しています。ふだん暮している東京はやはり経済都市であり、よくも悪くも栄枯盛衰、新陳代謝の著しい街です。一方、京都は、たとえば料理にしても、守られているものと変えてゆくことのバランスがうまく取れている気がします。人材も同じく、世代交代が無理なく、程よく進んでいるように見えます。ちょうど、衣服におけるサステナビリティとはなんだろう、と考えている時期でしたので、多くのヒントをもらいました。
 私たち45Rは、これまでも「直し」に力を入れてきました。経年により傷んだり、サイズが合わなくなった服をお客さまからお戻しいただいて直し、再生させる。イギリスのチャールズ国王の着こなしを見ると、スーツも、革靴も、よいものを直しながら使いつづけています。かっこいいなあといつも思っていました
日本にも野良着があります。色褪せ、つぎはぎ、繕いの美。古道具坂田の故・坂田和實さんはその美の提唱者であり、実践者でしたが、「ボロ」が時に痛々しく見えるのに対して、坂田さんの選ぶ「ボロ」にはどこか品が感じられました。
 世の流れを受けて、そしてさらに進めて、私たちは「直し」の価値を高めたいと考えています。たとえばコラージュのように継ぎを当てたり、工芸的刺繍で繕ったり、染めを重ねて色に深みを出したり──など、「直し」が、たんに始末な、後ろむきの行為ではなく、むしろ創造的、前進的で、衣服も人の心もハッピーにするものなのだという価値観を、これからの世に問うてゆけたら。そう思っています。
橋 慎志