Collection Autumn 2022

二〇二二 あ き

あとがき

以前、葉山に新しく造る旗艦店の話をしましたが、続いて鎌倉にも、それと 対になるような店を造ることにしました。葉山が「海」、鎌倉は「山」のフラッ グシップショップです。「海と山」は、これまでも 45Rの服作りの二大テーマで したが、2022年の45周年を経て、あらためてそれを「店」というかたち で、誰の眼にも明らかにしておこうと考えたのです。
葉山の建物は灯台のような外観ですが、鎌倉の店は馬小屋、厩舎をイメージ しています。馬という動物の姿の気高さ、眼差しの優しさが大好きなこと、厩 戸(馬宿)で生れたという聖徳太子伝説に心惹かれていること、それから前の 本店(Badou-R)の場所がかつて馬道、馬の水飲み場だったことなどから、45Rにとって、馬は大事なアイコンでありつづけています。
馬小屋といっても法隆寺の回廊のように、開放的で、心静まる空間を作りたいと願っています。 コロナ禍は、店のあり方を見直す機会にもなりました。店で過ごしていただ く時間、体験の質を高めるには、何より環境が大切であり、45Rの服にふさわ しい環境とは何かといえば、やはり自然です。葉山や鎌倉の店で、45Rの服で、 都市的生活で失われがちな野生の感覚を少しでも取りもどすことができれば─ ─そう思っています。
橋慎志